top of page
基調講演
​​がん理学療法の専門性を追究するために
高倉保幸
埼玉医科大学 保健医療学部 理学療法学科
 2010年に診療報酬が算定できるようになり、その診療報酬を算定できるようにするために医師を含めた多職種が研修会を受講することが必須となったことから、がん患者に対するリハビリテーションは爆発的に普及してきたと言っても過言ではないだろう。消化器がんではリハビリテーションを行うことで術後の合併症が減少し、入院期間を短縮できること、婦人科がんの術後に一定の頻度で生じるリンパ浮腫は改善できない病ではないこと、がんの終末期では大きな問題となる悪液質に対して運動が有効であることなどの知識が急速に拡散した。消化器外科医や婦人科医、終末期に関わる看護師など、それまでは関心を持たなかった医師や看護師がリハビリテーションに強い関心を持つようになり、昨今では「がん」はリハビリテーションの主要な対象疾患となってきている。しかし、一方ではがん患者に対するリハビリテーションという言葉の中に隠れてしまい、理学療法士の専門性についてはまだ
まだ確立されていないのも現状である。

  一方、昨今では、エビデンスやEBM(Evidence-Based Medicine)、ガイドラインなどという言葉が横行し、研究と臨床との乖離を危惧する声も同時に大きくなっている。しかし、これらの危惧の多くは誤解から生じるものであり、エビデンスやEBMをきちんと学べば、ほとんど問題は解決すると考えている。また、研究に関連する知識は研究に携わる者だけに必要なものではなく、臨床家が日々の診療を行う上でも大いに役立つとともに、がん理学療法の専門性を追求するためには必須となるものである。

 そこで、当講演ではエビデンスやEBM、ガイドラインなどに関する良くある誤解の解説を初めとして、がん理学療法の専門性を確立するためにキーワードとなるような前方視的ケース・コントロール研究、後方視的コホート研究、ランダム化を用いない傾向スコアを用いた研究、P値に頼らない統計的検討、がんで良く用いられる生存曲線解析の理学療法研究への応用などについて、時間の許す範囲で解説を行いたい。研究に携わる理学療法士だけでなく、日々の臨床に役立つような内容としたいと考えているので、がんの臨床に携わる多くの理学療法士にご参加をいただきたい。

【所 属】埼玉医科大学 保健医療学部 理学療法学科 学科長・教授

【職 歴】1984年より、癌研究会附属病院(現がん研有明病院)でがん患者に対するリハビリテーションに従事

     1998年より、埼玉医科大学総合医療センターリハビリテーション科でがん患者を含めた幅広い臨床活動に従事

     2007年より、現職。がんのリハビリテーションを含めた教育・研究活動に従事

【活 動】日本がんリハビリテーション研究会副理事長、日本理学療法士協会がん理学療法部門代表運営幹事、厚労省後

     援「がんのリハビリテーション研修会」運営委員会副委員長、厚労省後援「新リンパ浮腫研修会」運営委員副

     委員長、日本理学療法士協会「がんリハビリテーション研修会」代表ディレクター、埼玉県がんリハビリテー

     ション研修実行委員会副委員長、日本リンパ浮腫学会評議員、日本理学療法士協会・日本作業療法士協会共催

     「リンパ浮腫複合的治療実技研修会」ディレクターなど

bottom of page